SHANTiROSE

HOLY MAZE-39






 国王の城の優雅さは、多数の人々の労働と汗で成り立っている。それはまるで水面下では足をバタつかせている美しい白鳥のようだった。
 夜の饗宴の準備のため、集められた労働者が城の裏側を走り回っていた。会場の装飾、照明、音楽、食事はその場を彩るだけではなく、心をも潤すための演出が必要。畑違いの職人たちが所狭しと舞台を作り上げていく。
 裏口からは食材や酒が大量に運び込まれており、それらを管理する者、食材を洗い料理する者がひしめき合っていた。
 音楽家や芸人は、それぞれに用意された広い部屋で最後のリハーサルを行っている。
 そんな中、シオンは配膳係として紛れ込んでいた。今は荷物運びが主な仕事で、調理場や会場と、あちこちに呼ばれて雑用を繰り返していた。少しでも手を止めれば怒られ、指示を間違えれば怒られ、ちゃんとやっても遅いだの雑だのと怒られ続けた。それはシオンに当てられたものではなく、皆がそれぞれに激励し合っているものだった。腕に自信のある職人ばかりが集まっているのだ。皿洗い一つでも無駄のない仕事を心がける者ばかりだった。
 シオンも体力と器用さは人一倍あり、なんとか着いていくことはできていた。しかしこういった舞台準備はシオンの専門外である。それでも、その場その場の責任者は乱暴ながらも的確な指示をしてくれる。集中していれば目立つことなく紛れ込むことができていた。
 本来なら一人一人の名前も顔も把握されているのだが、数年に一度あるかないかの大きなイベント。チェックは済んでいるという前提のもとで渡されたバッヂを付けていれば疑われることはなかった。


 一時間もするとシオンは休憩に入った。同じ配膳係の五人と一緒に、狭い休憩室でテーブルを囲って腰を降ろす。メンバーはシオンと同じくらいの年齢の者から年配の女性まで、様々だった。途中で洗濯をしていた女性を見かけたが、互いに多忙で顔を合わせることはなかった。本当なら改めてお礼を言いたい相手だったが、今は近寄ることも憚られる。何も考えないことに徹した。
 ここにいるのは仕事が終わればすぐに地方の実家に帰る者ばかりで、それほど他人に興味は持たなかった。その場では協力し合っているが、親しくなるほどの時間も余裕もない。この割り切った関係はシオンには都合がよかった。
 女性の一人が足元に落ちていた新聞を手に取って「ねえねえ」と皆に声をかけた。
「王子様、見た? 噂では聞いてたけど、本当にきれいな顔してるわね。俳優みたい」
 いい男の話が嫌いな女性はいない。新聞一面に掲載されているラストルの写真に、皆が寄り集まった。
「能力のほうはどうなのかしら。すごい持て成しようだけど」
「初めてのご公務らしいじゃない。それはこれからでしょ。ティオ・メイ自慢の王子様、お披露目ってところかしら」
「私たち庶民がこうして地道に稼いでるなんて知りもしないんでしょうね」
「着飾って、酒池肉林から下々に命令を下すだけがお仕事だもの。でもさ、私たちもそういう人がいるから仕事があるんだし、いいんじゃないの」
 自虐的な笑いが起こる中、シオンは暗い顔になっていた。
(……みんな、同じことばかり言うのね)もはや言い返す気にもならなかった。(何も知らないで)
「――どうしたの?」思い詰めるシオンの顔を、一人が覗き込んでくる。「大丈夫?」
「え、ええ」シオンは慌てて笑顔を作った。「人が多くて、ちょっと疲れたの。でもすぐに慣れるわ」
「そう。よかった。ところで、あなたはこの王子様、素敵だと思う?」
「えっ……」
 率直な質問にシオンは戸惑う。そこに別の女性が口を挟んできた。
「やめなさいよ」
「だって、若い女の子の意見も聞いてみたいじゃない」
「わ、私は……」シオンは顔を隠すように、慣れないメガネの淵に指を当てる。「えっと、地元に婚約者がいるの。だから、そういうのは、あんまり……」
 女性たちはわっと声を上げた。
「へえ。じゃあ、もしかして結婚資金を集めるために、出稼ぎにきたの?」
「ええ、まあ……そう」
「健気な子ね。いいなあ。貧乏でも幸せそうで」
「まあでも、誰でもそんなものでしょう。私だって、貧乏だし旦那は不細工だけど幸せよ。旦那が私の王子様だもの」
「それもそうね。私の旦那もぱっとしないけど、きれい好きで気が利くし、結構自慢できるところあるのよ」
 ここにいるのは全員既婚者のようで、それぞれに平凡な家庭を惚気始めた。シオンは自然と体の力が抜け、どこかで抗いようのない羨ましさを抱いていた。
「あなたも若いのに、しっかりしてるわよね」
 また一人の女性と目が合い、シオンは慌ててメガネに指を当てる。
「数日とはいえ、遠いところから来たんでしょ? 結婚前のカップルなんて、普通はひと時も離れたくなはず。なのに、二人の未来のために、苦労を惜しまないなんて、頑張ってるじゃない」
「…………」
「離れても心は通じ合ってるって、こういうことを言うんだわ。信頼し合ってるのね。応援するわよ」
 何もできないけど、と付け足し、女性たちはまた笑った。
 そんな何気ない雑談に、シオンは胸が締め付けられていた。
(……私、もしかして、ラストルのこと、信頼してないのかな)シオンは俯き、唇を噛む。(そんなことない。彼の言ったこと、信じてる。誰が何を言っても私の気持ちは変わらない。必ず迎えに来てくれるっていう言葉は嘘じゃない。信じてるの。愛してるの。だから私は……)
 父やアミネスたちを裏切っても、と、シオンは自分のしてきたことを振り返った。自分勝手で酷いことをしていると、自覚しているはずだった。それも、ラストルとの間にある障害を乗り越えるため。

(――だったら、私、どうしてここにいるの……?)



*****




 夜の帳が下り、宴が始まった。
 この日は月は細く、空の暗幕を張ったような闇は、眩しいほどの照明で照らし出されたパーティ会場の輝きを引き立てている。会場の窓は開かれており、美しい女神像の立つ噴水のある庭に続いている。会場の外は警備兵がずらりと並び、参加者はあらかじめ招待されていたロゼッタ家に縁のある王族や貴族ばかりだった。
 誰もが自分の権力財力を見せつけるかのように目一杯に着飾っている。この日のために用意された衣装や宝石を褒め合い、胸の内で競い合う。
 来客のすべてが、国王であるカーグ、その隣にいる国賓のラストルと挨拶を交わした。
 ラストルは一段下の、少々控え目の衣装を身に着けていた。この国の主はカーグである。客人としてのさりげない気遣いだった。それでも、元々持った素質の輝きは隠しきれるものではなかった。白い羽をあしらった白いマントの端々で瞬く繊細な宝石は、分かる人には分かる最高級の技術が施されている。細身の青のスーツは彼の若さとスタイルの良さを際立たせるようデザインされた特注品だった。
 ラストルの愛想の悪さは人見知りであるということにされ、カーグさえフォローに回ってくれるほどだった。あとに着いて立ち回っているドゥーリオは、ラストルに人前に出るのは「あと少し」だと説得して、ここまで連れてくることができた。その言葉は自分自身にも言い聞かせ、何事もなく時間が過ぎるのを待ち続けていた。
 ティシラには、ラストルは疲れているからすぐ戻ると話した。彼女のことだからきっと会場に飛び込んでくるに違いない。しかし状況を考えて、今日はもう何もしないで欲しかった。間違ってラストルと人前で喧嘩にでもなったら言い訳もできない。パーティは早めに切り上げて、終わればすぐに就寝するから今日はティシラも休んでいるよう懇願した。
 ティシラは「ふーん」と素っ気なく返事をしていた。きっと分かってくれたとドゥーリオは信じたが、彼女の気が変わる前に、と気を逸らせていた。
 その頃、当のティシラは家来にパーティ用のドレスを持ってくるよう命じ、化粧や髪を直して鏡の中の自分を「完璧」と褒めていた。
 彼女の気は変わっていなかった。最初から、パーティに飛び込むつもりでいたのだった。


 ラストルの傍には次々と人が集まっていた。
 慣れない愛想笑いにも限界を感じ、人ごみを離れてドゥーリオに愚痴をこぼし始めていた。ドゥーリオも彼の体調を考え、早々に撤退しようかと考える。
 そんな隙を見て、頬を染めた独身女性が数人、ラストルを取り囲んだ。
 まずい。ドゥーリオはなんとか、彼女たちを傷つけずにラストルを連れ去りたかったが、女性たちは分かっているかのように彼をダンスホールに押しやっていく。
「ラストル様、私と一曲、踊っていただけませんかしら」
 そう言って手を差し出してくる女性を、ラストルは嫌悪した。しかし目の前で軽蔑の目線を送るわけにはいかない。それに、こういうことは初めてではなく、顔を逸らし、いつもの断り文句を口にした。
「あなたのような美しい方にお誘いいただき、大変光栄です。しかし時間は限られております。たくさんの淑女のどなたかを選ぶわけにはいきませんので……」
 女性たちは目じりを下げ、紳士的なラストルの言葉を喜んでいた。
「真面目でお堅いって噂は本当でしたのね」
「お心まで澄んでいらっしゃるなんて。天は王子に二つも三つも才をお与えなさったのね。なんて不公平なのでしょう」
 女性たちの戯言に、ラストルは苛立ちが募る。許されるなら暴言を吐き、完膚なきまで叩きのめして二度と人前に出られないほど恥をかかせてやりたかった。
 彼の本音だと知る由もなく、女性たちは近くのボーイを呼び、グラスワインを手渡してくる。
「では、この出会いに乾杯を」
 どうも離してくれそうもなかった。ドゥーリオは遠巻きにラストルの様子を伺い、近寄ることができずにいた。

 そんな彼を見つめるもう一つの目があった。
 招かれざる客、シオンだった。
 シオンは希望通り、このパーティの配膳係に就くことができた。変装した状態で会場の隅で雑用をしていれば、誰も注目してくることはない。うまく紛れ込み、ラストルの近くに居ることは叶った。しかしこの遠い世界で、誰にも劣らない華である彼の姿を見れば見るほど、惨めさが増して止まらなかった。
 女性に囲まれたときはあっと声が出そうになった。それでも、ラストルは表情を変えなかった。安堵と同時、こうしてこそこそ付きまとっている自分に嫌気がさしてしまう。
 私はここに居る――そう叫びたい衝動さえあった。だが困惑するラストルの姿しか想像できない。
 空いたグラスをトレイに並べながら、シオンはもうこんなことはやめようと考えていた。彼を信用して、待つべきだ。一体何をしているのだろうと、自分を責めていた。

 そこに、もう一人の招かれざる客がやってきた。
 いつの間にか会場に足をいれ、ドアの陰でタイミングを伺っていたティシラが、早足でラストルに近寄った。
「ラストル様。ご機嫌いかがかしら」
 ラストルと、ドゥーリオが青ざめ、固まった。
 ティシラは高いヒールで床を鳴らしながら歩み寄り、肩を大きく振って女性たちを押しのけた。
「こんな素敵なパーティにお呼びいただき、シェリアは大変感激しております。スポットライトを浴びながらラストル様のお傍にいられる幸せ、ずっと夢見ておりましたもの」
 相変わらず大袈裟な演技のティシラは注目される。ラストルが歯噛みしながらドゥーリオに目線を送ると、彼は体を縮めて何度も首を横に振っていた。
 ティシラを睨みつけてくるのはラストルだけではなかった。彼を取り巻く女性たちも、この厚かましい少女に忌々しそうな顔を向ける。
「あなた、どちら様?」
「いきなり何なのかしら。不躾ではありませんか?」
 女性たちは威圧し、ティシラをこの輪から排除しようとする。だがそんなものに負けるティシラではなかった。
「これはこれは、お美しいお姉さま方、初めまして。私、シェリアと申します。ラストル様の……」
 ラストルが警戒した。余計なことを言えば、人目など気にせずにつまみ出してやると強く思う。
「そうですわね……ボディガード、みたいなものかしら」
 テンションを上げているとはいえ、目的は忘れていないティシラはうまく演技を続ける。
「ボディガードですって?」
「ええ。不躾で厚かましい方々がラストル様を困らせないよう、お守りするのが私の役目なのです」
 女性たちは顔を赤くして肩を怒らせる。
「不愉快ですわ」
「不躾で厚かましいのはどちらなの」
「あら」ティシラは白々しく目を細め。「誰もあなた方のことだとは、一言も……」
 女性たちは更に顔を赤くし、気を悪くして立ち去っていった。
 ドゥーリオはこの場でティシラをなんとかしろと命令されても何もできないと考え、人ごみに隠れてラストルと距離を広げていた。
 カーグとノイエも冷めた目で「シェリア」を見つめていた。
「またあの娘か」
「こういう場ではよくあることです」
「それもそうだ」カーグはほくそ笑み。「まあこうして女に取り合われるのも今だけかもしれぬのだ。今宵は楽しんでもらおうじゃないか」
 ノイエはその意味を理解し、目を伏せた。

 一際目立つ登場をしたティシラのせいで、再びラストルの周囲に人が寄ってきた。
「ラストル様、こちらの姫君はどなたでしょうか」
「いえ……」
 言葉に詰まるラストルを差し置き、ティシラが膝を折って挨拶をしていく。
「私、シェリアと申します。ラストル様とは幼馴染でして、親しくさせていただいておりますの」
「では、王子と特別なお約束を交わされていらっしゃるということは……」
「いやですわ」ティシラはわざとらしく顔を赤らめ。「そんな詮索は野暮でございますよ」
 照れ笑いを浮かべると微笑ましい笑いが起こった。
 ラストルが一人取り残されたように蒼白して立ち尽くしていると、ティシラが手を差し伸べてきた。
「ラストル様、せっかくですから、楽しみましょう」
 寝言を抜かすなと、ラストルは心の中で罵る。すぐに彼女の手を取らない彼に、近くにいた男性が「どうなさいました」と首を傾げた。
「ご気分が優れないのでしょうか」
 ラストルは気まずくなり、返事をせずにドゥーリオを探した。まだ隠れているようで、視界の届くところにはいない。もうこれ以上は付き合っていられないと思うラストルに、ティシラが一歩近づき、低い声で囁いた。
「レディ一人、ろくにリードもできないの? ねえ、王子様」
「……何だと?」
 見つめ合う二人の目元が陰っていることには、誰も気づいていなかった。
「まさかダンスごときにビビってるわけじゃないわよね。ここで逃げたら恥晒しもいいところよ。かっこ悪い……」
 明らかな挑発だった。分かっているが、これは乗らなければティシラを調子に乗らせる口実になる。
 ラストルは一度目を閉じ、心から怒りを消した。心ここに非ずだった表情は一変し、優しく、堂々とした緑の瞳で「パートナー」を見つめた。別人のように切り替わったラストルに、ティシラは面食らってしまった。
 ラストルはすっとホール側に一歩進み、ティシラの指先を支えるように片手を差し出した。
 ティシラは満足そうな笑顔を見せる。彼の手に自分のそれを添え、それを合図に二人は同じ歩調で足を進めた。ホールの中央近くでティシラがくるりと回ると、ラストルは左手で彼女の右手を包みこむように顔の高さに持ち上げた。そして左手を肘を張り、指先だけに力を入れて、胸に寄り添うティシラの腰に当てる。ティシラも静かに彼の肩に手を乗せると、二人は背筋を伸ばして呼吸を合わせた。
 誰もが注目する中、ホールに流れる穏やかでゆったりとした音楽に合わせ、二人は足を出した。
 合図も打ち合わせも必要なかった。数えきれないほどのパーティを経験してきた姫と、いずれ世界を統べるべく厳しい英才教育を受けてきた王子のペアは、まるで童話に出てくるような理想のカップルだった。
 ティシラもラストルも、普段の素行や内なる性根に仮面を被せ、輝かしい舞台で舞う人形を演じている。人々の目が釘付けになるのも当然だった。
 ラストルが遅れをとるようならこっちがリードしてやる気概のティシラだったが、いくつかのステップで彼の実力を知り、遠慮する必要はないと感じ取った。手足や目線の流れ一つで、次の動きが分かる。ティシラが柔らかく体を逸らと、ラストルはすぐに彼女の体を支えてくる。だから安心して、大きく艶やかに体を捻って見せ場を作ることができた。
 誰もが手を止めて二人に見入っていた。しかしそのすべてが感動しているわけではない。先ほど追い払った女性の一人が音楽隊の指揮官に近寄り、もっと激しく早い曲をと命令していた。
 戸惑う指揮官だったが、しつこい女性に根負けし、音楽隊に指示を出して徐々に曲を変えていった。
 ティシラはすぐに曲の変化と、その意図に気づく。
「……曲が早くなるみたい。大丈夫? もうやめましょうか?」
 目を細め、皮肉を込めて呟くと、ラストルは表情も目線も変えずに応えた。
「あれだけ大口を叩いておいて、もう根を上げるのか?」
「あんたの心配してんのよ。続けるなら相手してあげる。でも転ぶなら一人で転んでね」
「バカが、それはこっちの台詞だ。調子に乗るな」
 曲のテンポが上がっていく。指定された曲は禁じられた恋に落ち、引き離されるほど燃え上がり闇に囚われる恋人をテーマにしたものだった。上流階級のパーティではあまり好まれない曲なのだが、二人は物怖じせず、音楽を服のように身に纏い、物語の人物になりきっていく。今まではどこか可愛らしさを残す若い二人だったのが、誰よりも熱く、儚い愛を知る物憂げな恋人に変身していく。
 ホールを舞う二人の髪や衣服は動くたび大きく靡き、操られているかのように息の合った仕草が、不思議と性に乱れる野蛮な獣にさえ人の目に映っていた。
 ダンスの良し悪しなどには気がいかないドゥーリオが、そっと指揮官に近づいた。
「……あの、そろそろ曲を終わりにしてもらえませんか」
 そう耳打ちすると、激しい曲の指揮に夢中になっていた指揮官は我に返って頷いた。
 指示通り、曲は途中を羽織り、フィナーレを迎える。
 ティシラとラストルは役を演じ切り、音楽の終わりと同時に動きを止める。
 数秒の静寂のあと、拍手が起こった。二人はいつもの表情に戻る、ティシラはご満悦で両手を広げ、観客に礼をしていった。
 ラストルは打って変わって不機嫌な様子になり、一同に背を向ける。二人に興味を持った人々が寄ってくるが、それらを無視し、ラストルは庭に立ち去っていった。
 ティシラは愛想よく皆に礼を言いつつも、「少々熱くなってしまいました。お庭で休憩させていただきます」と言って彼を追った。
 ドゥーリオも足音を忍ばせて二人を追い、様子を伺う。
 そして、今まで誰も見たことのなかったラストルの姿から目を離せないでいたシオンもまた、体の震えを隠しながらそっと庭に近づいた。





   

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