Blood



 チビは満足そうな顔で背もたれに寄りかかっていた。料理はすべて、その小さな体のどこに詰め込んだのかと思うほど、跡形もないくらいに綺麗に食べつくされていた。
 ブラッドも一通りを味わい、ゆっくりと寛いでいる。しばらくすると店員がきてテーブルの上を片付ける。
「食後のお飲み物はいかがいたしましょうか」
「僕はブレンド。チビは……」
 ブラッドは言いながら、チビと目を合わせ、意地悪そうに微笑む。
「君はオレンジジュースにでもする?」
 チビは何でもよかったのだが、なんとなく子供扱いされているようでむっとする。
「俺もお前と同じのがいい」
 チビはブラッドの言った「ブレンド」の意味が分かっていなかったのだが、きっとおいしいものに違いないと思い込んでしまっていた。自分の真似をしようとするチビがおかしくて、ブラッドは更にからかう。
「君の口には合わないと思うよ。そうだな、牛乳にしよう」
「そ、それだけは嫌だ! 俺は牛乳なんか嫌いなんだ」
「やっぱりね。だから大きくならないんだ」
 チビの顔が赤くなる。店員も隣で微笑ましく注文を待っていた。
「うるさい!」チビはそんな店員に向かって。「おい、俺もこいつと同じものを持ってきてくれ。もういいから、早く」
 捲くし立てられても、店員は冷静に笑顔を保ってその場を去っていった。チビはすっかりふて腐れている。
「大体な、俺はチビじゃない。大きくもないけど……フツウだよ」
「はは、そうだね。チビが嫌なら変えてもらえばいいじゃないか」
「だって、周りが勝手にそう呼ぶんだ。変えてもらうって、どうすればいいんだよ」
「強くなって、自分で好きなものを名乗ればいい」
 そう簡単にできることじゃない。きっとブラッドは分かっててわざと言ってるのだろう。チビは口を尖らせて彼を睨む。
「俺は、冒険屋になんかならない」
「どうして?」
「あんな奴ら、嫌いだ。意地悪だし、弱いもの虐めばっかりして楽しんでる」
「院内では、そうだね。でも、みんな子供だからなんだよ。自分の力を認めて欲しくて、だけどその方法が他になくて、自分より弱いものを虐めることでしか自己主張ができないだけなんだ」
「……お前も、そうだったのか?」
「そうだよ。僕は君と同じ。小柄でいつも虐められてたよ。でも、なんだかんだでいつもイデルが一緒にいてくれて、僕を庇ってくれていた」
「……そのときは、なんて名前だったんだ?」
「僕は、そのころから『ブラッド』だった」
 そう言えば、とチビは先ほどブラッドが話していたことを思い出した。確か、ブラッドはイデルからつけられた名前だったと。続きを聞こうとする前に、ブラッドは話し出した。
「僕はこれでも、本当はいいところのお坊ちゃんだったんだ。だけど、僕がまだ母親の腹の中にいたころ、両親は車で出かけて大きな事故に遭った。二人とも即死だったらしいんだけど、臨月を迎えていた僕は奇跡的に腹の中で生きていたらしい。駆けつけた医者が、その場で母親の腹を切り裂いた」
 またチビは、ブラッドの唐突な話に驚きを隠せない。ブラッドは構わずに続ける。
「僕は無事に一命を取り留めたんだけど、それは惨くて、グロテスクな光景だったらしい。ま、それはそうだよね。僕は母親の腹を破って、血塗れでこの世に生れ落ちたんだ」
 チビの想像力では追いつけないが、凄いことなんだということは分かる。食後でよかったと思う。
「僕は、よくある感動的な出産を経ることができなかった。親を亡くした僕を、誰が引き取るか相当揉めたらしい。もちろん、名のある裕福な家庭だったんだから親族はいくらでもいた。だけど、血の海から生まれた僕は気持ち悪がられ、縁起が悪いと誰も受け入れようとはしてくれなかった。親族の考えは一致し、僕が物心つく前にと、最初から生まれていなかったことに、親と一緒に死んだものとして孤児院に預けられたんだ」
 チビは言葉が出なかった。もしかすると自分もそんな悲しい生い立ちがあるのかもしれないと不安になったが、それよりも、そんな重い話を笑顔で語る彼の神経が信じられなかった。
「殺されて山に埋められなかっただけマシだよね」ブラッドの口調は軽かった。「成長してから、院長にこの話を聞いたんだ。さすがにそのときは落ち込んだけど、それをイデルに話したら、彼は僕のことを『呪われた子供』だとからかった。そして『血塗れブラッド』とあだ名をつけられて、組織に配属されてからもその名前を引き継ぐことになったんだ。それがすっかり定着してしまってる。僕も、今はこの名前が嫌いじゃない」
 そこに、店員がドリンクを運んできた。二人の前に熱いコーヒーが差し出される。チビはそれを覗き込み、苦い臭いに襲われて眉を寄せた。店員は続けてミルクと砂糖を置いて、去る、かと思ったらまたメモを取り出す。
「オーナーから伝言です」
 また、と思うが黙って聞くことにする。
「そのチビはお前の隠し子か」
 ブラッドは顔を引きつらせて、ため息をつく。
「そんなわけないだろう。僕はこんな大きな子供がいる年齢じゃ……」
 肩を竦めてチビに目を移す。二人の年齢差は、大体十五か十六くらい。
「ギリギリ、ありえないことはないな……」ブラッドはもう一度ため息をついて。「お互いに年を取ったな、って伝えてくれ」
「では」店員は少し腰を折り。「このお子様はブラッド様の隠し子、ということで認識いたしてよろしいでしょうか」
「は? 冗談じゃない」まったく、イデルの部下は性質が悪いと思う。「孤児院から連れてきた子だよ。それに、なんで『隠し』限定なんだ。彼女とか子供ができたら堂々と紹介してやるから安心しろって言っといてくれ」
「かしこまりました」
 一例して、店員は今度こそ去っていく。ブラッドは言った後に、「彼女がいない」ことを自分から認めてしまったことに気づく。どうやらカマをかけられたらしい。結局、イデルはブラッドのことが気になっているのだ。今頃厨房で笑われているのかと思うと悔しいが、あの頃と同じく、今でも自分とイデルは友達であり、ライバルであることは変わっていないと思うと安心できることは否定できなかった。
 チビはブラッドと店員とのやりとりに興味を示さず、「オリジナルブレンドコーヒー」と睨めっこをしていた。臭いだけで気分が悪くなる。なのに、これを飲めと言うのかと首を捻っていた。だけど、もしかしたら味はおいしいのかもしれない。先にブラッドが口にして、その反応を見ようと顔を上げる。目が合い、ブラッドは笑顔を取り戻してゆっくりコーヒーを口に運んだ。チビは舐めるように彼を見つめた。ブラッドは目を伏せて、上級の豆を使ったそれを堪能した。チビも急いで真似しようとする。だが、結果は無残なものだった。やはり見た目や臭いの通り、チビの口にはとても合わなかった。さすがに吐き出すことはできずに、必死で飲み込もうと足をバタつかせて苦戦する。予想通りの展開にブラッドは口を開けて笑い出した。
「……なんだよ、これ」
 チビは騙されたと思い、ブラッドを睨む。
「さては、お前のと俺の、違うやつだろ。俺のだけ苦いんだ」
「まさか。これは元々苦いものなんだよ」
「嘘だ。元々苦いものをなんでわざわざ飲まなきゃいけないんだ。薬じゃあるまいし」
「苦いからおいしいんだよ。口に合わないならミルクや砂糖を入れればいいじゃないか」
 完全にチビの負けだった。ここは大人の領域らしい。これ以上無理して、この黒い液体を飲むことはできない。そうだ、酒やタバコも大人にならないと飲めない。それと同じなんだと、チビは自分に言い聞かせながら素直に砂糖に手を伸ばす。
 それでも、まだチビはしばらくコーヒーと戦っていた。いくら砂糖やミルクを入れても、どうしても苦味が消えなかったからだ。最後には真っ黒だったそれは真っ白で甘ったるいものになってしまい、原型すら留めていなかった。だが、やっと自分の好きな味になってくれたところで、チビは落ち着きを取り戻し、唐突にブラッドに声をかけた。
「あのさ、今、組織で一番強い奴って、誰なんだ?」
「?」ブラッドは首を傾げて。「へえ、興味あるんだ」
「いや、だって……」チビは口籠らせる。「結構、他のやつがそういう話してるから。いつか組織に入ったときに、誰の下に付くかとか、今のうちに調べておいたほうがいいとか……」
 ブラッドも孤児院出身の冒険屋だ。だからそういう話題のことも知っている。だけど、と思っていると、チビは顔を上げ。
「でも、俺は冒険屋にはならない」と、主張する。「でも……一応、今はそこにいるから、聞いておきたいなって、思って」
 きっと、ただの好奇心なんだろうということは分かる。やはり、強がってもチビは子供だ。本当は仲間との会話に興味あるし、中に入りたいのだと思う。ただ素直になれないだけなのだろう。あまり意地悪すると可哀想だとブラッドは思い、話を進めた。
「一番と言っても、基準は稼ぎの数字になるが……今は、サクラというやつかな」
「……え? 確か、カルセラってやつじゃないのか?」
「ああ、カルセラは『表』でのトップだ」
「表?」
「組織には裏と表がある。共有する者がほとんどだが、どっちかを専門にした上で仕事が与えられるんだ。表というのはただの便利屋みたいなもので、裏には『殺し』が絡む。その分危険が大きいから当然、裏の方が稼ぎがいい。だから表立っては活躍できないけど、実質数字を稼ぐのは裏のやつらの方が上なんだよ。裏を専門にしてる者はそれなりの条件を満たした者だけだが、表でも状況によってはそれをせざるをえないこともある。例えば、戦争やテロの援護とか。もちろん、断る権利はあるけどね」
 チビには初めて聞く話だった。冒険屋をただの殺し屋だと思っていたのだが、こんなふうに種類分けられていることまでは知らなかった。
「でも、サクラって、女みたいな名前だな。まさか、女なのか?」
「とんでもない。ごっつい岩みたいな男だよ。ただ桜の花と関係があっただけだろう。それに、デスナイトに女はいないよ。女人禁制っていう決まりがあるわけじゃないんだけど、マザーという女だけの組織があるからね。女性はみんなそっちに持っていかれるんだ」
 マザーの名前も聞いたことはある。デスナイトの商売敵であり、宿敵のようなものだと思っていいと。しかし場合によっては同じ仕事を請けることもあるとか、妙な関係でもあるらしい。まだチビは理解できないでいることだった。
「でも、組織では人の入れ替わりが激しいから、現在のトップより、若手に目をつけたほうが賢いかも」
 チビは、自分が組織に入ることを前提としてブラッドが話を進めていることには気づかずに耳を傾けていた。
「そう言えば、こないだ、凄い新人が入ってきたんだ。まだ十四、五くらいだろうね。だけど既に貫禄みたいなものがあって、身長も僕に近い。きっとすぐに追い越されるんだろうな。そいつはまるで大人みたいで、酒も女も知ってるような顔して、もう何人かの先輩にケンカを売ったらしい。もちろん、負けるケンカではなかった。腕も凄いが頭も切れる。組織も、これは逸材だと絶賛して特別扱いだよ」
「凄いな。そいつ、何て名前だ?」
「最初はディルフィアと呼ばれていたんだが、それは昔の名前だったようだ」
「え、でも、そんな名前の奴、知らないぞ」
「院の出身者じゃないよ。噂によると賊か何かに育てられたんだとか。きっとあの年で何人も殺してきてるんだろうな」
「……どうして、冒険屋に?」
「さあ。そこまでは知らないよ。僕は彼をちらっと見ただけだし、口をきいたこともなければ、目が合ったことさえないんだから。確か、最近、正式に組織から名前を貰って……そうだ、『ルークス』だ。そんな名前だったな」
「ふうん……そいつは、裏ってやつなのか?」
「まだ決まってないけど、そうなると思う」
 そこで、なぜかチビは急に寂しそうな顔をする。
「……じゃあ、お前は?」
 ブラッドは一瞬、表情を消した。きっと、チビは殺しが嫌いなんだと思う。ブラッドは答えを選んだ。ここで彼に嘘をつく必要はなかった。それを理解した上で、ブラッドは質問に答える。
「『表』だよ」
 理由も分からないまま、チビはほっとしてしまった。こんなに優しくて軟弱そうな男が殺しだなんてと、そうではなかったことに安堵した。



×××××




 それから、更に一時間ほど雑談した後、「さっさと帰れ。営業妨害だ」というイデルの伝言を受けて、店を出ることになった。
 車の中で、チビは暗い顔をしていた。きっと帰りたくないのだろう。だが、現実、チビの帰るところはそこしかない。可哀想だとは思うが、今はどうすることもできない。もしかしたら、連れ出したことは彼にとってよくないことだったのだろうかと少し後悔する。
「チビ、楽しかったか?」
「ん? うん」
 返事にも元気がないが、本音だということは分かる。そうでなければ、帰り道でこんなに落ち込むことはないのだから。それに、と思う。ブラッドも楽しかった。お互いが楽しめたのなら悪いことはないはずだと、そう思うことにした。これからもたまに遊びに連れていってやればいい。もう少し大きくなれば銃や剣の扱い方を教えることもできる。他の者もそうやって生活しているのだ。チビが特別なわけではない。
 来たときと同じように、ブラッドは門の前で車を止める。空は紫に染まっていた。
「じゃあ、また来るから」
「……うん」
「なんだよ、そんなに落ち込んで。そんなに僕のことが好き?」
「へ、変なこと言うなよ。別に、そんなんじゃ……」
「そう? でも今にも泣きそうな顔してるよ。いいよ、泣きたかったらお兄さんの胸を貸してあげるよ」
 ブラッドは冗談を言いながら、両手を広げる。
「……泣く?」
 チビは白けたような顔になる。ブラッドは自分で寒くなった。
が、チビの異様な表情を、どこか不自然に感じた。
 手を下ろしてしばらく彼の目を、探るように見つめた。
(……チビ?)ブラッドは眉を寄せる。(お前は今、何を考えている……?)
 食い入るようなブラッドの鋭い視線に、チビは恐怖を感じた。
「……な、なんだよ!」
 チビの大声で、ブラッドは我に返る。慌てて目を逸らして、笑顔を作る。
「ああ、ごめん。なんでもないよ。僕も名残惜しくなって、その生意気な顔を見納めておこうかなって……」
「……変な奴」
「君に言われたくない」
 ブラッドは先に車から降りて、助手席に回ってドアを開ける。
「ほら、いつまでもこうして別れを惜しんでるわけにはいかないだろう。また近いうちにくるから、今日は大人しく戻って。それで、仲間に『ブラッドって言う凄くカッコイイ冒険屋』の話でも聞かせてやるんだ」
 いじけたまま、チビは車を降りる。お礼も、別れも言わずに歩き出す。
「じゃあ、またね」
 ブラッドがチビの背中に声をかける。チビは足を止めた。しばらく溜めて、振り向く。
「ブラッドなんていう冒険屋の名前なんか、今まで一回も聞いたことない。お前、下っ端だろう! 何の自慢にもならねえよ」
 そう言い捨てて、再び院に向かって走っていった。ブラッドは笑顔のまま、無意識に拳を握っていた。
(……クソガキが)
 そう思いながら、開けっ放しだったドアを乱暴に閉める。そして運転席に、は戻らなかった。
 チビの姿が完全に院内に消えたことを確認して、ブラッドも門を潜る。そのまま管理室へ向かい、受付口の硝子越しに事務員のディグに声をかける。
「ディグ。ちょっと資料室へ行きたいんだけど」
 ディグはやせ細った小柄の老人だった。椅子から腰を上げる。
「ブラッドじゃないか。まだいたのか」
「チビと出かけてた」
「チビ? あの厄介者と?」
「そう、あの厄介者と」
「物好きな奴だな。で、何の用だ」
「資料室の鍵を貸してくれないか。その厄介者のことでちょっと気になることがあるんだ」
「……何を調べるつもりだ」
「変に勘繰らないでくれよ。ただ、チビがここに来たときの状態を知りたいだけだよ。ご存知の通り、アレだろ? 何かあったのかなと思って。ただの物好きの好奇心だ」
 ブラッドはそう言いながら、何枚かの紙幣を差し出す。ディグにはそれを受け取れない理由はなかった。だが、受け取ったからには彼の要望を飲むしかなかい。紙幣と入れ替えるように鍵を出した。ブラッドはそれを手の中に収める。
「ありがとう」
「散らかしたり、持ち出したりするなよ」
「分かってるよ」
 ブラッドは地下にある資料室に向かった。


 資料室には孤児院に預けられた者の情報が、書類によって管理されている。重要書類として、厳重に扱われているが、あまり利用されることはなかった。だがその量は莫大だった。中に入ると室内のほとんどが頑丈な棚で区切られており、天井近くまで紙という紙が詰め込まれている。あまり人が入ることもなく、埃臭い。電気のスイッチを入れると室内は明るく照らされる。
 しかし、この中からチビの資料を探すだけでも骨が折れそうだ。確かチビはここに来て七年目だと言っていた。手がかりはそれだけだった。
 調べたいと言っても、そう大したことではない。ブラッドは少し後悔しながらも足を進める。七年前のラベルの棚がすぐに見つかって、あまり大量でないことを願いつつ、辺りを眺めながら紙の壁の間に紛れ込んでいった。
 思っていたより早くチビの資料を見つけることができた。
 ブラッドは彼に関するものを一通り取り出し、その場に座り込む。ファイルは薄く、あまり多くはなかった。どうやら身元は分かっていないようだ。
 ここから離れたところにある森の中でミイラ寸前だったところを、仕事で訪れた冒険屋に拾われたらしい。すぐに死んでしまうだろうと思われていたが、異常なしぶとさで与えられた水分や食料を吸収し、みるみる回復……。
 特に貴重な情報はなかった。だが、ブラッドはそのときの写真を眺めながら何やら思案していた。
(……もしかして)
 何度も同じものを見直している。
(まさか、そうなのか? いや、でも……)
 それを繰り返した末、煮つまり、肩を落として顔を上げた。
(……そうだとしても)ため息をつき。(僕には関係ないし……正直、これ以上関わらないほうがいいかもしれない)
 チビのことは嫌いではない。嫌いどころか、本当にまた遊びに連れていってやりたいと思っていた。だが、もしかすると自分の手には負えないものなのかもしれないと、彼との関わりを切ることを考えた。寂しい、そう思った。
(できれば……チビの成長を見たかったんだけど)
 やはり、無理だ。ブラッドはそう答えを出した。資料を持った手の力が抜ける。
 きっとチビは、また自分が迎えにきてくれることを楽しみに待つのだろうと思う。そして、いつまで待っても来ない自分をいつか恨むのかもしれない。また来ると、そう約束してしまったのだから。
(裏切り、嘘つき……か)
 泣きそうなほど、辛かった。
(……ごめんな、チビ)