SHANTiROSE

INNOCENT SIN-後書






 やっと終わりました。何年かかったことか…100話超えで今までで一番長くはあるんですが、更新遅かっただけで読み返すとそれほど長くない、と自分では感じました。
 ここまでお付き合いくださった方には感謝です。
 なんだか歯切れの悪い終わり方になりました。
 一応次に繋がるようにこんな感じにしましたが、正直次の話を書くかどうかはまだ迷ってます。
 次はロアの話です。それと、ティシラとクライセンの恋愛に触れる話。このままだとロアが何者なのか分からず仕舞いなのでそこは書きたいなとは思ってますので、考え中です。

 まず、いろいろと言い訳。あちこち辻褄合ってなかったり、あれはどうなったと思われる部分について、思い当たるところを書いていきます。

・最初の話にあったろうそくとか宝石とか。
その場だけのエピソードで、複線でもなんでもありません。
ろうそくについては最後に触れましたが、結局本心は見えなかったので重要な役目ではない。

・レオンの母親は?
いるけどとくに触れませんでした。必要な役割がなかったので。

・アカシック・レコード
よく言われているのは過去も未来も書かれているらしいです。ここでは過去のみという設定です。

・ドッペルゲンガー
これも有名なオカルトで、一体何なのかは諸説あります。ここでは多重次元絡みのバグという設定です。
自分と同じ人間と出会って精神がおかしくなるというのはよくある話です。
自分と同じ人間がどこかにいて自分として現実で生活していて人や物に何かしら影響を与えているって結構な恐怖…というのは実体験から得た感情です。長くなるので詳細は省きます。
これが怪談なら、徐々にもう一人の自分の存在が大きくなっていって、自分が消されてしまいそうで正気を失って、って話になるのだと思います。
そのときの恐怖をもとに、今回の話の設定を作りました。

・エミーって何者?
普通の魔法使いです。特別な血筋とか過去はありません。
途中にあった生まれたときらしき描写はあっちもこっちも共通です。悲惨なようですが、別に本人は気にしてません。
あっちの世界でもサンディルとの絡みを入れようかと考えましたが、変にギャグっぽくなるのでやめました。外見や雰囲気がモロ好みなので、もし会ってたら一目ぼれしてたと思います。
エミーが最後に答えた言葉の真偽は分かりません。本当にただ暴れたかっただけなのか、クライセンの思っていたように犠牲者に救いを与えないために言ったのか、単にその場の思いつきだったのか、他に意味があるのか、不明です。

・マルシオはティシラを好きなのか
これも不明。好きだと思えば好きで、そうじゃないと思えばそうじゃない。人間のように好きで好きでたまらない、我慢できないっていう衝動がないので自分でも分かってない状態です。
人間の世界にいて、しかも恋愛脳のティシラと一緒にいるので、自分にもそういう感情があって普通なのかもと錯覚している可能性もあります。
ミランダが煽っていたのは本当にマルシオがそうなのかどうかではなく、ミランダ自身の中にある考え方を主張していただけです。
今回のマルシオの暴走は、カームやミランダのような若くて未熟で感情豊かな二人の影響で混乱したせいもあります。

第二章でまだクライセンが行方不明だったときに、謎の魔法使いたちにティシラが狙われて、マルシオが主救出するという話を入れる予定が最初はありました(第二章の途中で無駄な魔法使いの話があったのはそのためです)。
そのときに、マルシオがクライセンがいなくても自分だけで戦えたと自信を持つ、でも……っていう話で、今回の第三章のマルシオの感情を混乱させる原因の一つにしたかったのですが、入れられませんでした。

ここから、ただの言いたいこと。

名づけが苦手です。ネーミングセンスがなさすぎて。
国とか組織とか、本当はもっと複雑でいろんな場所や役割とかあるはずなんですが、そこまで考える余裕がなかった。
そもそも「SHANTiROSE」第一章からずっと、話が大きくてこんなの自分の能力じゃ無理だと思い続けて書いてました。

久しぶりに第一章を読み返しましたが、時間が経って改めて客観的に見れたとき、これならもっと丁寧に説明入れてもっと文字数増えててもよかったんじゃないかと思いました。
第三章も含めて、あんまり長くてもだれるから、これでもいろいろ省略して書いたつもりなんです。でもきっと小説が上手な人が書いたら、これより長かろうと短かろうともっとうまくまとめられるんだろうなとか、どうしようもない理由で呆然となってます。

作り込みが甘いんでしょうね。重要じゃなくても本分に出なくても、土台となる世界観をもっとしっかり作って書けばまた違うのかもしれない。
自分では好きな世界観で、嫌いなキャラはいません。だから書いてて楽しくはあるのですが、今の流行に乗ってないこと、多数が求めてる展開や結果とはズレてるんだろうなというのは自覚してます。

例えば、ジギルとイジューはそれなりに両想いでいずれくっつくんだろうなと思わせる関係のほうがよかったんだろうなとか思うのですが、個人的には二人がお似合いだとは最初からまったく思ってませんでした。だからジギルはイジューに恋愛感情は一切ありませんでした。
それどころか、もしスカルディア内の風紀が乱れていた場合、傍にいた三人全員と関係を持っていてもおかしくないと思ってます。そうなると尚更イジューは対象ではなく、今以上に相手にされていませんでした。

それとか、マーベラスは清廉潔白の正義の集団で、エミーに従ってた人たちもどこかで疑問を抱いて、死ぬにしても最後は目を覚ますという展開のほうが大衆向けだったかもしれない。
この話を語ると長くなるのでこれも省略します。
ただ、「MagicALaMode」からここまで読んでくださってる方ならこの世界観に慣れていらっしゃると思うのですが、そもそも「魔物・悪魔イコール悪」ではないし、今更勧善懲悪の話になるわけがない。
今回の話ではエミーが悪役にあたりますが、同じ人でも住む世界が違えば天才と言われたり面倒見のいい頼りがいのある女性だったりして、死んでただよかったと言われるようなキャラにはしませんでした。
どちらかと言うとレオンのほうが悪に近いです。歪みがなければ彼こそが世界を滅ぼす邪悪な魔法使いになっていました。神の悪戯的な出来事とジギルとの出会いでそうではない道を進むことになっただけで、結局本質は変わっていません。
こっちのクライセンと似てるようですが、中身が全然違います。クライセンは元々はあっちの彼がそうだったように、優しくて真面目な好青年です。
でもレオンは真正のサイコパスです。倫理観のない子供が大量破壊兵器のスイッチを握ってる状態。それは運命的なものだったので、ザインとイラバロスは滅びの道を選びました。そうすれば、まだ名も知らないある男が一人だけ生き残り、一人でランドール人の生死を背負って苦痛や苦悩の末に世界最強の魔法使いになって人類滅亡を防ぐ。その未来も見えたので、高潔な魔法使いであるべきランドール人が世界を滅ぼすくらいなら、まだ見ぬ同胞に英雄になってもらいたかった…という、なんとも身勝手な理由で魔法戦争は終わってました。だからクライセンにはイラバロスを裁く権利があったというわけです。
こうやってまとめるとバカバカしく感じますが、思想ってそんなものなんですよね、現実でも。
あと、「MagicALaMode」のノーラも悪役でしたが、今回の話で住む世界や時代が違えばジギルになっていたのだし、逆に、ノーラの存在があったからジギルは自分が悪だと思い込んでしまうという、世界がどんどん倒錯していく話でした。

性格の悪いキャラが多いのは、単に私の好みです。
だから今回の別世界のクライセンは普通すぎてあまり書いてて楽しくなかった。
ティシラもだけど、後半の暴走ぶりは楽しかった。
元のほうのティシラが珍しく無傷だったので、あっちの彼女をボロボロにしてみました。
よく考えたらクライセンが傍にいたらティシラが比較的大人しいのは仕方ないことなんですが。
今回あっちのティシラが化け物になっても堂々としていたのは魔界に住んでいた時間が短かったので、女性が人前で羽や角を出すことははしたないという考えが薄かったからです。

時間の経過が相変わらずよく分からない世界です。
外見が老けたりしなかったりするのは魔力の影響で、魔力が強いほど自由にできます。体内も若々しいままです。経験だけは増えますが。簡単に言うと、ご都合な設定です。
こっちのエミーが婆さんなのは、サンディルの真似です。

ジギルとレオンについて。
今後、二人は一緒にいることになりますが、お互いにイライラしっぱなしな関係になります。
ジギルはレオンの顔が女みたいにきれいなことに、見てるだけでムカつきます。能力にも恵まれていて外見もいいのに性格が歪んでいて、碌なことをしないので更にムカつきます。
レオンは、地味で品のない根暗なジギルが救世主の運命を背負ってるというところに嫉妬しまくり。しかも微妙に女にモテるし、以前は女に囲まれて好かれて、更にキスも経験済みと知って心底ムカつきます。
そんな二人なので日常では足を引っ張り合い、でも真面目な話ではちゃんと協力し合い、またムカつき合いを繰り返します。
いずれはそれぞれにちゃんとした大人になります。そのときの世界がどうなっているかはまだ分かりませんが。

ミランダはロアのことを、単純に好きというわけではありません。
好きは好きだけど、家族愛的なものと、魔法使いとしては尊敬しているという好意です。幼少の頃はロアを「優しい大人のお兄さん」だと恋心もありましたが、成長していくうちに捻くれたクソ野郎と知って恋愛感情はなくなりました。
でもロアの本性を知ったのも彼に興味があったからで、なぜロアをそう評したのか、尊敬する人を否定したくてもできない葛藤であの面倒臭いキャラになってます。
カームとの関係は、カームが諦めずに、一途に口説き続ければくっつくと思います。ただ、カームが女に弱いところがあるので、堅物のミランダを信頼させるには時間がかかるかもしれない。
二人揃って高等魔法使いとして出てきたのは、元の世界で親しくなった二人の影響です。
なぜ一番相性の悪そうなミランダなのか? ベリルがこの世界にいるならそっちのほうがいいのでは? という気持ちもありますが、たぶんベリルがカームを好みではありません。なんだかんだ、すぐ浮つくカームを引き締めてくれるミランダのほうが似合っていると思います。

ベリルとハーキマーはジギルに多少の恋愛感情がありました。頼りになるし口は悪いけど聞いてみればちゃんと情があって、人の個性を見極めて的確なアドバイスをくれるところにギャップ萌えみたいな感じで。
いろいろあって強制的に年頃の男女が共同生活せざるを得なかったからこその、あるある的な恋愛です。元から好みだったというわけではありません。
メノウはボーイッシュでゲームが好きで、恋愛に関しては遅れていたのでそういうのはありませんでした。でもジギルのことは慕ってました。それ以上にエミーに憧れていましたが。

ジギルもその辺は遅れていたので誰も相手にしませんでした。もしエミーがもっと女らしくて色っぽかったら影響を受けていたかも。だからといってエミーに惚れることはなくて、性欲刺激されて他の可愛い女の子に興味を持ってしまったかもしれない。
といっても、エミーがジギルがそういうのに興味がないのを知っていて女の子たちを傍に置いたので、もし入り乱れておかしなことになりそうだったら対策してたと思います。

ミランダがライド(輪)の魔法使いとして登場したことについて。
こっちの世界ではとくに属性はありません。
メディスもライドの魔法使いでしたが、さすがに彼とは格が違います。メディスはクライセンに匹敵する魔法使いになるので。
この話は結構前に日記で書いてましたが、今後触れそうにないのでここでネタバレしておきます。
メディスはいろいろあって、「NIGHTMARE LOVERS」に出た時神(ときがみ)と契約します。クロシスのことです。因みにクロシスはクロノスをもじったものです。時神と死神は、絡みはありませんが同等の神です。
クロシスが最後のほうで意味深なセリフを言ったのは、ティシラの息子と自分が契約する未来を見たからです。
クライセンが死神と契約したときと同じ状況ではありませんが、こちらも強制的な感じで契約しました。割と自由にあちこちの時代に移動できてしまうのですが、好きでなったわけではないので乱用はしません。今までの行動は仕方なくやってます。
だからと言ってメディスがまともかというと決してそうではなくて、むしろクズで最低最悪の性格です。
「MagicALaMode」の中で「クライセンに頼まれてやった」と言ってますが、頼まれていません。本当は命令です。二人の関係は悪いです。
ちゃんとした話として考えてないので書く可能性は低いのですが、先の話は設定としては結構あります。

クライセンが昔荒れてて口も悪かった件について。
この設定は初期の段階でありました。たぶん誰も気づいてないと思うけど、「MagicALaMode」の中でもしれっと普段使わない言葉を口にしています。気づいてもただの誤字くらいにしか思われてなかったかもしれません。
ティシラは一緒にいる時間が増えたので、クライセンが気を抜いたときに出てしまう言葉遣いに気づいています。どうしてとも思わず、彼の素を垣間見たようで一人でときめいているだけでとくに追及する気はないようです。

正直に言いますと、今回の話のドッペルゲンガー、アカシック・レコード、パラレルワールド部分は全部その場の思いつきです。
サイト開設当初は全然違う話でした。
細かいことは忘れてしまったのですが、当初はマルシオはルシファー的な存在で、昔、王に逆らって負けて封印されて、ある女性が孕んだ胎児にその魂が宿ってしまい、でも子を守りたい母が出産の時期を悪い力で遅らせて時期をずらすことで誤魔化してマルシオをこの世に送り出す。実は何かとんでもないものを持っているが自覚はないマルシオという部分と、どこかで気づいていてクライセンに助けを求めているという部分は同じ、という感じでした。
第一章でロアが「孤独な者」がどうとか言ってたのはまだこの設定が脳内にあったからです。
改めてちゃんと話にしようと思ったとき、あまりにベタで何の捻りもない設定で書きたいと思えず、いろいろオカルト系の資料を見ながら今の話になりました。
あと、マルシオには兄がいて、母はマルシオを生んだあとに死んでしまったので、兄はマルシオを恨んでいるって設定もあったのですが、それじゃラストル・ルミオル兄弟とダダ被りだし、兄の扱いをどうするか(マルシオ覚醒の引き金引くだけの役割で、正直どうでもいい存在だったので)とか、問題ありすぎて没になりました。
アカシアの心臓が右にある設定は、これは初期から決まっていました。赤が左、青が中心、白が右という、設定集にだけ出てきた「アスラ」の言葉もここで使うつもりでした。原始の石を持つルシファー的なマルシオの心臓を貫いたつもりが、実は右だったのでミスって仕留められなかった。だから死に損なったマルシオが別の天使に乗り移れた、っていう流れで生かすつもりだったんです。
まあでもそれはそれでやっぱりベタだし、他で似たような話書いてるから惜しくはなかったです。

書きながらずっと思ってたんですが、今回多重次元が舞台というだけでしんどいのに、同じキャラが複数登場して混乱必至でした。
これがマンガとか映像だったら外見に違いを出せばそれだけで区別できるけど、文章でというのは大変すぎる。
私が大好きで尊敬しているSF小説家(もちろんプロ。大御所)の作品にも同じ世界線に同じ人が二人存在する設定の話がありましたが、キャラ名にダッシュとかつけて区別してたのを思い出しました。プロでさえそういう工夫をしているというのに、私のような素人が「シチュエーションや会話の内容で大体分かるだろう」程度で書いてしまうなんて、さぞや分かりにくかったことだろうと思います。
いえ、プロの方と比べるのも烏滸がましい。そもそもその方の作品はSFで専門用語や記号がばんばん出るので、むしろ記号で区別するのは自然な流れ。逆に私の書いてる内容でいきなり記号でキャラ表記なんかしたら違和感しかなく、ただの手抜きにしか見えないと思う。
どうしたらいいんだろうと思いながら書き続けて、終わってしまってもまだ悶々と悩んでしまいます。正解はないのだとは思いますが、いつか「こうすればよかったのか」と思える案や表現方法を見つけられるようこれからも勉強します。

主人公が別世界に迷い込み、チート、タイムリープ(違う)、ハーレム(そうか?)と、流行に乗ってる?!なんて密かにテンション上がりました。冗談ですが。
クライセンやティシラに自己投影は難しい。元からチートキャラだし、だから毎回未知の敵と戦う話になってます。
でも次回は敵と戦う話ではありません。
これも、今の脳内では割とベタな話なのでこれから練り直します。

では、いったんお終いです。
また見に来ていただけると幸いです。
ありがとうございました。



hinoto
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